
「生きものの種類が多いこと」だけじゃない?
「生物多様性」と聞くと、アマゾンのジャングルや、サンゴ礁に住むカラフルな魚たちを思い浮かべるかもしれません。 もちろん、それも生物多様性の一部です。しかし、それだけではありません。
生物多様性とは、地球上のあらゆる生命の「豊かさ」と「つながり」のことです。
生物多様性の3つのレベル 1. 生態系の多様性: 森、川、海、街など、さまざまな環境があること。 2. 種の多様性: 動植物から細菌まで、いろいろな生きものがいること。 3. 遺伝子の多様性: 同じ種でも、色や形、模様などに個性があること。この3つが複雑に絡み合って、私たちの地球環境(生命圏)を支えています。
なぜ重要なのか?(ポートフォリオ効果)
投資の世界に「卵を一つのカゴに盛るな」という格言があります。 資産を分散させることで、暴落時のリスクを減らすという考え方です(ポートフォリオ理論)。
自然界も同じです。 多様な生きものがいることで、気候変動や病気の流行といった「ショック」に強くなります。 これをレジリエンス(回復力)と呼びます。
例えば、ある種類の作物しか植えていない畑で病気が流行れば、全滅してしまいます。 しかし、多様な植物が生えている森なら、ある種が病気になっても、他の種が生き残り、森全体の機能は維持されます。
私たちの暮らしを支える「生態系サービス」
私たちは、生物多様性から多くの恩恵を受けて生きています。これを生態系サービスと呼びます。
* 供給サービス: 食べ物、水、木材、薬の原料など。 * 調整サービス: 気候の安定、洪水の緩和、水の浄化など。 * 文化的サービス: 美しい風景、レクリエーション、精神的な安らぎ。 * 基盤サービス: 酸素の生成、土壌の形成など、すべてを支える働き。
WWFの報告によると、世界のGDPの半分以上(約44兆ドル)が、自然資本に中度〜高度に依存しているとされています。 ビジネスも、私たちの毎日の生活も、自然という「基盤」なしには成り立たないのです。
今、何が起きているのか?
残念ながら、生物多様性はかつてないスピードで失われています。 科学者たちは、これを「第6の大量絶滅」と呼んでいます。恐竜が絶滅した時以来の規模です。
主な原因は、私たち人間の活動です。開発による生息地の破壊、乱獲、汚染、気候変動、外来種の持ち込みなどです。
私たちにできること:ネイチャーポジティブ
しかし、希望はあります。 世界は今、「ネイチャーポジティブ(自然再興)」へと大きく舵を切りました。 2030年までに、生物多様性の損失を食い止め、回復軌道に乗せるという目標です。
IKIMONプロジェクトも、その大きな流れの一部です。 身近な自然に目を向け、「どこにどんな生き物がいるか」を知ること。 それが、ネイチャーポジティブへの第一歩になります。
次は、「ビジネスと生物多様性」の関係について見ていきましょう。