概要
「
自然共生サイト」は、2023年に環境省が開始した認定制度です。「民間の取組等によって
生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定する仕組みで、後述する
OECM(Other Effective area-based Conservation Measures)の日本における主要な実装形態となります。
企業林、工場の緑地、里地里山、屋上庭園など、これまでは保護区として認識されていなかった場所が、生物多様性への貢献として正式に評価される画期的な制度です。
理論的背景
2022年の
生物多様性条約COP15で採択された「昆明-モントリオール生物多様性枠組み」において、2030年までに陸と海の30%以上を保全する「30by30目標」が掲げられました。
しかし、国立公園などの厳格な「法的な保護地域」だけで30%を達成するのは困難です(日本の陸域保護地域は約20.5%)。
そこで、保護地域以外でも実質的に多様性が守られている場所を「
OECM」としてカウントし、30%を達成しようという国際的な流れがあります。
自然共生サイトは、このOECM認定を受けるための国内フィルターの役割を果たします。
詳細解説
認定の要件
環境省の審査基準は主に以下の要素で構成されています。
- 境界の明確化: 地図上で区域が明確であること。
- ガバナンスと管理: 土地所有権や使用権原に基づき、継続的な管理が行われていること。
- 生物多様性の価値: 希少種がいる、または在来種中心の健全な生態系が維持されていること。
- 長期的な保全: 原則として5年以上の保全継続が担保されていること。
メリットとインセンティブ
- 企業: 生物多様性への貢献を「数値化・可視化」でき、TNFD対応やESG投資評価において強力なエビデンスとなります。
- 自治体: 地域の自然資源を国の制度でブランド化でき、関係人口の創出につながります。
- 税制優遇: 一部の緑地に対しては、固定資産税の軽減措置などが検討・導入されつつあります。
認定プロセス
- 申請: 前期(春)と後期(秋)の年2回。
- 審査: 有識者委員会による審査。
- 認定: 環境大臣による認定証の交付。
- 国際データベース登録: OECMとして国際的な地図に登録(希望する場合)。
批判的検討
「ペーパーパーク」化の懸念
認定を受けること自体が目的化し、実質的な管理が伴わない、あるいは質が低い場所が認定されてしまうリスク(グリーンウォッシュ)が指摘されています。
これを防ぐためには、認定時だけでなく
「モニタリング(継続監視)」による質の担保が不可欠です。
評価の難しさ
「
生物多様性の価値」をどう証明するかは難題です。専門家による詳細な植生調査には多額の費用がかかるため、中小企業や市民団体にとっては申請のハードルが高いのが現状です。
IKIMONによる貢献
IKIMONは、
自然共生サイトの認定取得や維持管理において、効率的かつ効果的な支援を行うことができます。
1. 申請・維持のためのデータ基盤
認定を受けるには「そこにどんな生き物がいるか」のリストが必要です。また、認定の更新には継続的なモニタリングが求められます。
IKIMONを活用することで、以下のメリットが生まれます。
- 低コストでの基礎調査: 社員や市民参加型のイベントでデータを収集。
- 継続モニタリングの自動化: 日々の投稿がそのまま報告用データになる。
- 質の証明: 写真付きの記録により、データの客観性が担保される。
これらを通じて、「
自然共生サイトのDXツール」として、企業の負担軽減と
生物多様性保全の質の向上に貢献します。
参考文献
- 環境省. 自然共生サイト|30by30|生物多様性.
- IUCN (2019). Recognising and reporting other effective area-based conservation measures.