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自然資本 (Natural Capital)

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概要

自然資本 (Natural Capital) とは、自然環境(森林、土壌、水、大気、生物多様性など)を、企業や社会の活動を支える「資本(ストック)」とみなす経済学的な概念です。 工場や機械(人工資本)、人材(人的資本)と同様に、自然も「手入れをしないと減耗(劣化)し、利益(生態系サービス)を生み出せなくなる資産」として捉え、適切に管理・投資すべき対象とします。

理論的背景

ダスグプタ・レビュー (2021)

英国財務省が発表した報告書『生物多様性の経済学:ダスグプタ・レビュー』は、自然資本の重要性を決定づけました。 「私たちの経済は自然の中に埋め込まれている(Embedded)」とし、自然資本の毀損は経済成長の基盤そのものを掘り崩す行為であると警告しました。これにより、生物多様性が単なる「環境保護活動」から「経済・財務の核心的課題」へと格上げされました。

詳細解説

ストックとフロー

自然資本を「ストック(資産残高)」、そこから得られる恵みを「フロー(利子・配当)」と捉えます。
  • ストック:森、湿地、サンゴ礁、地下水脈など。
  • フロー(生態系サービス)
- 供給サービス:食料、水、木材。 - 調整サービス:気候調整、洪水防止、水質浄化。 - 文化的サービス:レクリエーション、精神的充足。

これまでの経済は、フローだけをタダ同然で消費し、ストックの減少(元本割れ)を無視してGDPを計算してきました。自然資本経営では、ストックの維持・回復をコストではなく「投資」と考えます。

統合報告書とIIRC

企業の「統合報告書」において、財務資本だけでなく非財務資本(自然資本含む)の重要性が強調されています。自然資本を使い潰している企業は、将来のキャッシュフローを生む力を失っていると評価され、株価が下がる時代になりつつあります。

批判的検討

価値評価の困難さ

自然の価値を貨幣換算(例:この森の価値は10億円)することには、技術的な難しさと倫理的な批判があります。「プライスレスな自然に値段をつけることで、金さえ払えば壊してもいいという免罪符になる」という批判です。 しかし、現状では「価格がゼロ」として扱われていることが最大の破壊要因であるため、「見えざる価値を見える化」する手段としての意義が強調されています。

IKIMONができること

IKIMONは、見えにくい自然資本ストックの「状態(State)」を可視化するダッシュボードです。
  • 資産管理台帳:企業の敷地や管理地にある「生き物」をリストアップすることは、自社が保有・管理している「自然資本の棚卸し」そのものです。
  • 減耗の検知:モニタリングにより外来種の侵入や種の減少を早期に検知することは、資本の毀損を防ぐリスク管理になります。
  • 投資対効果:ビオトープ整備などの「自然資本への投資」が、実際にどれくらい生物多様性を回復させたか、投資のリターンを定量的に示します。

参考文献

  • Dasgupta, P. (2021). The Economics of Biodiversity: The Dasgupta Review. HM Treasury.
  • Helm, D. (2015). Natural Capital: Valuing the Planet. Yale University Press.

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