概要
TNFD (Taskforce on Nature-related Financial Disclosures) は、
企業や金融機関が「自然関連のリスクと機会」を評価し、開示するためのフレームワークを構築する国際的な組織、およびその枠組みのことです。
気候変動版の「TCFD」に続くもので、2023年9月に最終提言（v1.0）が公開されました。
これにより、投資家は「この会社は自然を破壊して儲けているからリスクが高い」「この会社は自然再生に貢献しているから将来性がある」といった判断を財務情報として行えるようになります。
理論的背景
「気候」から「自然」へ
TCFD（気候変動）の成功を受け、
生物多様性や水資源などの「自然資本」全体についても同様のリスク管理が必要だという認識が広がりました。
世界経済フォーラムのグローバルリスク報告書でも「生物多様性の損失」が長期的なトップリスクとして挙げられており、金融市場の安定のためには、自然リスクの可視化が不可欠となりました。
詳細解説
LEAPアプローチ
TNFDが推奨する、自然関連の評価プロセスです。IKIMONを活用する上で最も重要な概念です。
- L (Locate)：自然との接点（場所）を特定する。
- 自社の工場やサプライチェーンが、生態学的に重要な場所（ホットスポット）にあるか？
- E (Evaluate)：依存と影響を評価する。
-
依存 (Dependency)：地下水や花粉媒介など、自然の恵みにどれくらい頼っているか？
-
影響 (Impact)：汚染排出や土地改変など、自然にどんなダメージを与えているか？
- A (Assess)：リスクと機会を評価する。
- 自然が劣化することで事業が止まるリスクや、逆に保全することでブランド価値が上がる機会など。
- P (Prepare)：開示・対応を準備する。
- 具体的な目標設定と報告。
開示の4本柱（TCFDと同じ構造）
- ガバナンス：体制はどうなっているか。
- 戦略：シナリオ分析など。
- リスク管理：どうリスクを特定・低減するか。
- 指標と目標：具体的な数値目標。
批判的検討
データの不足と複雑さ
Locate（場所の特定）において、サプライチェーンを遡って「原材料の原産地の正確な位置とその生態系」を把握することは、多くの企業にとって極めて困難です。
また、
生物多様性はCO2のように単一の指標で測れないため、評価手法が乱立し、比較可能性に課題があります。
IKIMONができること
IKIMONは、
TNFD対応において企業が最も苦労する「
Locate（場所）」と「
Evaluate（影響・依存の状態把握）」のフェーズで強力な武器になります。
- Locate支援: 「当社の工場周辺には希少種〇〇が生息しており、重点管理区域である」という事実を、市民データを用いて特定できます。
- モニタリング指標：ネイチャーポジティブへの貢献（機会）を示すための具体的・定量的なKPI（生物種の増加数など）として、IKIMONのデータを利用できます。
- エンゲージメント：ステークホルダー（地域住民・従業員）と一緒に調査を行うこと自体が、TNFDで求められる「ステークホルダーエンゲージメント」の実績となります。
参考文献
- TNFD. Recommendations of the Taskforce on Nature-related Financial Disclosures.
- 環境省. TNFDアドプションの加速化に向けた手引き.
