概要
ESG投資(Environment, Social, Governance)において、これまで「E(環境)」の中心は「気候変動(脱炭素)」でしたが、近年
「生物多様性」が急速に主要テーマ化しています。
機関投資家は、生物多様性の損失を「システミック・リスク(市場全体を崩壊させるリスク)」と捉え始めており、投資先企業に対し、
ネイチャーポジティブへの移行戦略やリスク開示を強く求めています。
理論的背景
「ダブル・マテリアリティ」の浸透
投資判断において重要(マテリアル)な情報の定義が広がっています。
- シングル・マテリアリティ:環境が企業に与える影響(例:洪水で工場が止まる)。財務的影響のみ。
- ダブル・マテリアリティ:企業が環境に与える影響(例:森林破壊)も重要視する。EUを中心に、この「双方向の影響」を開示・管理すべきという考え方が標準になりつつあります。
詳細解説
投資家の動き
生物多様性の損失に大きな影響を与える主要企業100社に対し、集団でエンゲージメント(対話・要求)を行う機関投資家のイニシアティブ。ここに選ばれた企業は、対応を誤るとダイベストメント(投資引き揚げ)されるリスクがあります。
使途を環境保全活動に限定した債券。
生物多様性保全プロジェクトへの資金調達手段として発行が増えています。
格付機関の評価基準
MSCIやCDPなどのESG評価機関も、
生物多様性に関する質問項目を増やしています。
- サプライチェーンにおける森林破壊ゼロ方針はあるか?
- 水リスクの評価を行っているか?
- 生物多様性への影響評価を行っているか?
これらのスコアが低いと、年金基金などの巨額マネーが入ってこなくなります。
批判的検討
データの信頼性
ESGスコアの算出に使われるデータは、企業の自己申告に依存している部分が大きく、実態とかけ離れた「作文」だけで高評価を得てしまうリスクがあります。
現場のリアルなデータ(一次データ)に基づいた評価への移行が求められています。
IKIMONができること
IKIMONは、企業のESG評価における
「S」と「E」をつなぐユニークなツールです。
- E (Environment):生物多様性データの取得・開示による環境スコア向上。
- S (Social):地域住民や社員を巻き込んだ市民科学イベントによるコミュニティ貢献・従業員エンゲージメント向上。
「机上の計算」ではなく、「現場の実測データ」と「市民参加の実績」をセットで提供できるため、投資家に対しても説得力のある(グリーンウォッシュでない)ESG活動のエビデンスとなります。
参考文献
- CDP. Biodiversity: The new frontier in ESG.
- Nature Action 100. Investor Expectations for Companies.