概要
「自然とのつながり(Nature Connectedness / Relatedness)」とは、
個人が自然界に対して感じる感情的・認知的な一体感や愛着の強さを示す心理学的概念です。
単に自然の中にいる時間(接触頻度)ではなく、「自然を自分の一部だと感じているか」「自然に対して親しみを感じているか」という
主観的な関係性の質を指します。
この尺度のスコアが高い人は、幸福度(Eudaimonic well-being)が高く、かつ環境配慮行動(Pro-environmental behavior)をとりやすいことが分かっています。
理論的背景
主要な測定尺度
心理学では以下のような質問紙を用いて測定されます。
- NR (Nature Relatedness Scale):
- 「私は自然の一部だと感じる」「休暇は自然の中で過ごしたい」など。
- CNS (Connectedness to Nature Scale):
- 自然との情緒的な一体感を測る。
- INS (Inclusion of Nature in Self):
- 「自分」と「自然」の円がどれくらい重なっているかを図で選ばせる簡易法。
詳細解説
幸福度との強い相関
メタ分析(Capaldi et al., 2014)によると、自然とのつながりが強い人は以下の傾向があります。
- 人生の満足度が高い: ポジティブな感情が多く、活力(Vitality)がある。
- 不安が少ない: 孤独感や不安感が低い。
- 自己超越的な価値観: 金銭や地位よりも、コミュニティや環境への貢献を重視する。
つながりを高めるには? (The Pathways to Nature Connectedness)
英ダービー大学の研究チームは、単なる知識教育や接触よりも、以下の5つのルートがつながりを深めると提唱しています。
- Senses(感覚): 自然の音を聞く、花の香りを嗅ぐ。
- Emotion(感情): 生き物を見て「かわいい」「すごい」と感動する。
- Beauty(美): 自然の芸術的な美しさを鑑賞する。
- Meaning(意味): 自然のサイクルや物語を知る。
- Compassion(共感): 自然を守りたい、ケアしたいと思う。
驚くべきことに、「知識(名前を覚えることなど)」は、つながりを深める上ではあまり重要ではないという結果が出ています。
IKIMONができること
IKIMONは、ユーザーの「自然とのつながり」を育むツールです。
- 感性重視のUI: 図鑑的なスペック情報だけでなく、「美しい写真(Beauty)」「感動コメント(Emotion)」を重視するUIが必要です。
- ストーリーの共有: 「この花は昔〇〇に使われていた(Meaning)」といったトリビア機能。
- 知識偏重への警戒: 「名前がわからないと投稿できない」ようなハードルを設けず、「きれいだったから撮った」という感性を称賛する設計にします。AI同定はあくまで補助です。
参考文献
- Capaldi, C. A., et al. (2014). The relationship between nature connectedness and happiness: a meta-analysis. Frontiers in Psychology.
- Lumber, R., et al. (2017). Beyond knowing nature: Contact, emotion, compassion, meaning, and beauty as pathways to nature connectedness. PLOS ONE.