概要
30by30(サーティ・バイ・サーティ)とは、
2030年までに地球の陸域と海域のそれぞれの30%以上を保全・保護しようという国際目標です。
2022年12月の
生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明-モントリオール生物多様性枠組み」の第3ターゲットとして明記されました。気候変動における「パリ協定の1.5℃目標」に匹敵する、生物多様性分野の最重要数値目標です。
理論的背景
科学的根拠
E.O.ウィルソンが提唱した「Half-Earth(地球の半分を保護区にする)」構想などが議論のベースにあります。多くの科学者が「生物種の絶滅を防ぎ、生態系サービスを維持するためには、少なくとも地球の30%〜50%の自然な生息地を残す必要がある」と警鐘を鳴らしてきました。
現状(2020年時点)、世界の陸域の約17%、海域の約8%しか保護されておらず、これを30%まで引き上げるには、抜本的な変革が必要です。
詳細解説
日本の達成状況と課題
日本(2023年時点)の現状は以下の通りです。
- 陸域: 約20.8%(国立公園など、OECM含む)
- 海域: 約13.3%
陸であと10%、海であと17%近く積み増す必要がありますが、狭い国土でこれ以上「立入禁止の厳正保護区(国立公園の特別保護地区など)」を増やすのは現実的に困難です。
OECM (Other Effective area-based Conservation Measures)
そこでカギとなるのが
OECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する地域)です。
法的な保護区でなくても、企業林、里山、神社の森、ゴルフ場の緑地など、民間の管理によって実質的に自然が守られている場所を「30%」の中にカウントします。
日本ではこのOECM認定制度として「
自然共生サイト」がスタートしました。
批判的検討
質より量の追求
「30%という面積」を達成することだけに注目が集まり、
「生物多様性の質(Quality)」が置き去りにされる懸念です。
砂漠や氷雪地帯など、開発価値が低く生き物も少ない場所ばかりを保護区にして数字を稼ぐ(Residual Protection)のではなく、生物多様性が豊かで危機に瀕している場所(ホットスポット)を優先的に守る必要があります。
先住民・地域住民の権利
特に海外(途上国)において、保護区の拡大が、その土地で暮らしてきた先住民の排除や人権侵害につながらないよう配慮することが、COP15の合意文書でも強く強調されています。
IKIMONができること
IKIMONは、
30by30達成のための
「OECM発掘・支援プラットフォーム」です。
- 隠れた30%の発見: まだ国に認知されていないけれど、実は豊かな生態系が残っている「隠れOECM(企業の遊休地や裏山)」を、市民の投稿データから発見できます。
- 質の証明: OECMとして認定されるために必要な「生物リスト」を作成し、その場所が単なる緑地ではなく「質の高い生息地」であることを証明します。
参考文献
- CBD. Target 3: Conserve 30% of Land, Waters and Seas.
- 環境省. 30by30ロードマップ.
- Dinerstein, E., et al. (2019). A Global Deal for Nature: Guiding principles, milestones, and targets. Science Advances.