概要
2022年12月、カナダのモントリオールで開催されたCOP15で採択された、
2030年までの新たな世界目標です。
気候変動における「パリ協定」に相当する歴史的な合意であり、今後の
生物多様性政策のすべての基準となります。
「2030年までに生物多様性の損失を止め、反転させる(
ネイチャーポジティブ)」ことをミッションとし、そのための具体的な
23のターゲット(個別目標)が設定されました。
理論的背景
愛知目標の反省
2010年に採択された前回の世界目標「愛知目標(2011-2020)」は、20個の個別目標のうち、完全に達成されたものはゼロでした。
この失敗原因として、「目標が抽象的で、進捗を測る指標がなかったこと」「実施メカニズム(資金や技術支援)が不足していたこと」が挙げられました。
GBFではこの教訓を活かし、より定量的で(Measurable)、実施体制を強化した目標が作られました。
詳細解説
4つの長期ゴール(2050年)と23のターゲット(2030年)
構成は複雑ですが、IKIMONに関連する重要ポイントは以下の通りです。
ターゲット3:30by30
陸と海の30%以上を保全する。(→
30by30の詳細)
ターゲット15:ビジネスへの要請
大企業や金融機関に対し、生物多様性へのリスク・依存・影響の評価と開示を求める。
これは
TNFDのような枠組みが事実上の国際ルールになることを意味しており、ビジネス界に最も大きな影響を与えています。
ターゲット12:都市の緑化
都市部における緑地や親水空間の面積・質・接続性を向上させる。都市住民の健康と福祉(
ウェルビーイング)のために重要とされています。
ターゲット21:データと知識
意思決定に必要なデータ、情報、知識へのアクセスを確保する。
ここでは
「伝統的知識」や「市民科学」の重要性も明記されており、IKIMONのようなプラットフォームの国際的な正当性の根拠となります。
批判的検討
実行力の懸念
目標は立派ですが、法的拘束力はありません。各国がこれを国内法や国家戦略(NBSAP)にどう落とし込み、予算をつけるかが問われています。
特に途上国は「保全には金がかかる」として先進国に巨額の資金支援を求めており、資源動員(資金の準備)が最大のボトルネックです。
IKIMONの貢献
IKIMONの活動は、
GBFが掲げる複数の目標達成に寄与するものです。
- ターゲット3 (30by30): 身近な自然の価値を再発見することで、OECM(自然共生サイト)の可能性を広げます。
- ターゲット15 (ビジネス): 企業の自然関連情報開示(TNFD)に資する、信頼性の高いデータ基盤として機能します。
- ターゲット12 (都市): 都市緑地における生物多様性を可視化し、住民参加型の緑化活動を後押しします。
- ターゲット21 (知識): 市民による観察データを集積し、科学的知見として共有することで、社会全体の知識レベル底上げに貢献します。
IKIMONを利用することは、世界的な目標(
GBF)の達成に向けた、身近で具体的なアクションの一つとなります。
参考文献
- CBD. Kunming-Montreal Global Biodiversity Framework.
- 環境省. 生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)の結果について.